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2013.12.03ブログ

今、危惧していること(長文)

ここ一ケ月間ほど更新が滞っていましたが、全量買い取り関連の案件の締切が近づいてきたこともあり、超多忙を極めていました。
それはそれで良いのですが、競争が過熱してくるに連れて競合相手のセールストークも過激になってきました。

そんな状況にあって、危惧していることがあります。

それは金融機関の暴走とお金に目がくらんで冷静な判断能力を失っているお客様が増えていることです。

全量買い取り案件の場合、銀行融資で設置される方が多いのですが、最近は銀行も余裕がなくなっているのか、融資獲得競争になっているのか、融資の審査で銀行から求められる書類が「見積書」と「予想発電量」の2つだけでOKなのです。
ここで問題なのは、「予想発電量」を根拠に売電金額・返済金額を決めていることです。

前にも書きましたが、予想発電量なんてものはSF小説と同じで根拠に乏しく、参考にはなるもののこれを根拠に売電と返済を決めるのはあまりにも無謀です。それは、例えるなら競馬の予想を根拠に借金の返済計画を立てているようなものだからです。

「今年は有馬記念で的中するから月いくらずつ返済します」
「皐月賞は外すけど、ダービーで取り返すから収支はプラス」
そんな計画で融資してくれる銀行はないでしょう。

ところが、太陽光の予想発電になるとそれがまかり通っています。

ひどい会社になると、
「5年で元を取ります」(実際にあった例)
などと言って勧誘、契約してしまっている物件が多々あります。銀行もそんなSF物件に融資してたりします。

こんな甘い返済計画で融資を受けて設置した人は、2~3年は問題ないでしょうが、遠くない将来に返済不能に陥るか、まったく利益を計上しないまま売電を続ける羽目になります。

売電48円の時代で、年々発電量が落ちないという(ありえない)前提で、アパート設置で元を取るのに7年半以上かかっていました。
現在は、システム価格は下がったものの、売電も36円+消費税に下がり、発電能力が飛躍的に増えたかというとそうではなく、回収年数が短縮されるなどということは起こりえません。

太陽光発電システムは故障や不良がない限りは20年以上運転可能な設備です。ただし、「故障や不良がない限り」です。
落雷などの故障は仕方がないとして、製品不良は1年目で出てくるとは限りません。

いくつかのメーカーが出力保証を打ち出しています。
「出力保証20年(または25年)があるから大丈夫」
そう考えているお客様がいるとしたら、相当なお人好しの方だと思います。

出力100%を25年保証しているわけではありません。あくまで「25年までは最大出力の下限値(「公称最大出力」の90%)の80%の出力を保証します」です。つまり、25年後に90%×80%=72%(=約3割減)まで出力が落ちない限り保証の対象としないと言っているわけです。

では、だれが30%落ちていることを発見・報告するのでしょうか?
設置されると分かりますが、太陽光発電は瞬間毎に発電量が変動します。日射強度が少し変わっただけでも発電は変わります。雲がかかったら当然発電は落ちます。雨が降ったら、雪が降ったら、火山が噴火したら、PM2.5の濃度が・・・。
こんな状況下で、お客様は「出力が30%落ちている」ことを証明できますか?
できるわけがありません。
発電が「0」にならない限り、故障だと断定できる根拠はありません。
要するに、「出力保証」なんてあってないようなものなのです。

こんな状況で「予想発電量」を根拠に融資している金融機関、融資を受けているお客様 etc・・・。
なんだかサブプライムローンと同じ匂いがしてきました。

先月のニュースで、京セラが70MWのメガソーラーを稼働させたというニュース報道がありました。そこで出ていたのは、「回収年数は約9年半」でした。70MWも設置して、やっと9年半で元を取るんですよ。たった20kW程度で5年や7年で元が取れるわけないですよ。

あと、
他メーカーの提案でよく見受けられるのが北面設置です。太陽が南にあることぐらい小学生でも分かりそうなものですが、お客様の側が予想発電量と予想売電金額に目がくらんで、実際の物件が北面設置になっていることに気付かないケースが多々あります。
しかし予想発電量は「南面設置」や「東(西)面設置」になっているケースがほとんどです。なぜならメーカーは北面を設置NGにしているので、ソフト上で「北面設置」のシミュレーションを出せないようにしているからです。
実際は北面なのに東面のシミュレーション7年で元が取れる計算・・・取れるわけないですね。

太陽って北半球であれば必ず南に位置しているんですが・・・。それに気づかない大の大人が多すぎます。

また、「影に強い」と言っているメーカーがありますが、ひどい業者は言葉をすり替えて「影でも発電する」と言ってセールスしています。影に「強い」と「発電する」は全く意味合いが異なります。
よく考えてみてください。「太陽光」発電システムですよ。「日影」発電システムではないですよ。日影であればどんなメーカーのパネルも発電しません。あらかじめ影がかかることを承知で設置するケースは別ですが・・・。その場合は、設置側も「殺す系統」と「生かす系統」にうまく分かれるように工夫して設置するものです。それがプロってものです。 

「高温特性」をセールストークにしているメーカーもありますが、いくらパネルが高温時に発電が落ちなくても、接続先が室内パワコンであれば、夏なら間違いなく30℃以上の環境下にあります。その状況下ではパワコンが停止あるいは出力を50%下げていることをどれだけのお客様がご存知なのでしょうか? そういう理由で、モジュールが高温に強かろうが弱かろうが、夏場は発電は落ちますよ。日照時間の長さで発電量の減少をカバーしているんですよ。であれば、パネルの「高温特性」って意味ないんじゃないの?

お客様を騙すことがプロの仕事ではないと考えます。

金融機関は担保を取るので、返済不能に陥っても困りません。
我々業者が提示する発電量はあくまで「予想」です。保証値ではありません。太陽光発電システムというものは、もともとお天気仕事で出力は不安定です。それが再生可能エネルギーってものです。発電機とは別物です。

「保証する」と言ったって、すぐに修理できるとは限りません。国も「3か月以内」に修理できれば良しとしています。
実際、昨年はパワコンが入手困難になりました。システムが停止している期間分、売電期間を延長します、なんてことには絶対なりませんよ。つまり停止してしまうとその分だけ損するわけです。

また、10年後にパネルを交換することになったとして、10年後のモデルを設置することは出来ません。既設のパネルと同じモデルで交換しないと、電気はうまく流れてくれません。そのことをどれだけの方が知っているのでしょうか?どれだけの業者が説明しているのでしょうか?仮に5年目から発電が激減し始めたとして、「パネルを交換します」と言われたって、また5年後に劣化する同じパネルを供給されたいお客様はどれだけいるのでしょうか?

狭い土地にキチキチに詰め込んだ地上設置の配置図もよく見ます。架台の影が隣の列のパネルに届いてしまうんですが・・・。
なのに、予想発電量は南面設置の普通の予想発電量。売る側が太陽光発電の特性を全く理解していないとしか思えません。

活況なのは良いことですが、売る側も買う側も、もう少し冷静になった方が良いと思います。
このままエスカレートすると、必ず問題が起きます。私はそのことを危惧しています。

用松 俊彦


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